1. 我道 ~飲食の社長たち~
  2. 株式会社喜代村 代表取締役社長 木村清氏
食を伝える「拘り」がそこにある 我道 飲食の社長たち

日本の飲食業界をリードする社長たちの「拘り」はどこにあるのか。生い立ちや人生観などのパーソナリズム視点からひも解き、人気飲食店オーナーの素顔と内面にクローズアップしていきます。企業理念やビジョンはもちろん、お客様一人ひとりに対しての想いや取り組みも知ることができるシリーズ企画です。

記事

株式会社喜代村 代表取締役社長 木村清氏

2011/12/20

株式会社喜代村

代表取締役社長

木村清氏

1952年4月19日生

24時間・年中無休。こだわりのマグロをはじめ、
『すしざんまい』に世界中のネタが集まる秘密とは?

プロフィール
千葉県野田市出身。15歳で航空自衛隊に入隊。退官後は司法試験を目指すが、商売、特に水産や食材の魅力に引き込まれ、水産会社に入社。すしネタや弁当、食品の開発・販売に携わる。その経験を活かし、27歳で喜代村の前身となる木村商店を創業。以来、弁当や寿司ネタの製造・開発・販売、海産物の輸入販売などを手掛け、2001年、築地場外に『すしざんまい』をオープンする。現在、都内を中心に、北海道から福岡まで全国46店舗を展開。釣り好きで、マグロ釣り大会の第53回ヘミングウェイカップ世界大会(2003年・キューバ)で銀メダル受賞。
主な業態
24時間・年中無休の寿司店『すしざんまい』全46店舗の運営
企業HP
http://www.kiyomura.co.jp/
株式会社喜代村 代表取締役社長 木村清氏の写真

「築地に人を集めてほしい」。その一言から、『すしざんまい』は始まった。

 私と魚との付き合いは古く、水産会社で働いていた頃も含めると、かれこれ40年近く海産物の輸入・販売・加工の仕事に関わっています。27歳で独立して、当時から、魚や海産物の新しい販路を模索し、自分のアイデアでいろいろな事業も手掛けてきました。その頃はまだ珍しかった温かい弁当の店や、大型の居酒屋や……。80以上の事業を立ち上げていました。おかげさまでどれも順調。ところがバブルの影響や銀行の倒産で、その事業を手放すことになってしまったんです。一度は商売を諦めかけましたが、女房の後押しもあり、手元に残った資金で築地に10坪ほどの寿司店『喜よ寿司』を開店。それが、いまから14年前のことです。
 それまでのノウハウを駆使し、「いいネタをどこよりも良心的な価格でお客さまに提供する」というコンセプトでがむしゃらにがんばりました。結果、1年で行列ができるほどの店に。それが、築地の関係者の目に留まって――。折しも、以前は500~600万人を集客していた築地に、150万人を切るお客さましか集まらない時代です。「木村さん、築地に人を集めてくれ」と。それで、それまでの私の事業を見ていてくださった方々のバックアップを得て、現在の築地本店がある場所に『すしざんまい』をオープンさせました。

24時間・年中無休、いつ行っても同じ値段。出発点は、「お店はお客さまのため」。

 『すしざんまい』を始めるにあたって考えたのは、「いまのお寿司屋さんが抱える問題点を全て解決する店にしよう」ということでした。そのひとつが、24時間営業。どうしてもお寿司屋さんには市場の関係で定休日がある。しかも「今日はネタが切れたから」と早じまいする店もある。それでは、お客さまが食べたい時に食べたいお寿司を口にできない。じゃあ、私たちが24時間・年中無休でやろう、と。
 もちろん、ただ開いてればいいというわけではありません。ネタも常に75種類以上、メニューでいうと150以上揃えました。しかも、鮮度を保つために6時間毎にネタを入れ替えて。お寿司屋さんでよく見かける「時価」も、なし。一人でも多くのお客さまに、いつでも、新鮮で美味しいネタを、同じお値段で提供する。それが『すしざんまい』のポリシーだから、です。

母の教えがあったから――。誰もが食べやすい価格と品質への挑戦。

 私は幼少期に父を亡くしたことで、決して豊かではない環境に育ちました。母が女手ひとつで3人の子供を育ててくれたわけですが、当然、お寿司なんて高嶺の花でしたね。「いつか、お袋に美味しいマグロを食べさせたい」。そんな思いがあったから、世界の海を巡って究極のマグロを求めてきたのかもしれません。
 「みんなで食べれば美味しいから」。それが母の口癖でした。例えば、2切れの刺身も半分にすれば家族4人で美味しく分け合える。そんな考え方の人でした。実は『すしざんまい』の原点も、そこにあります。「美味しいものをみんなで分け合って食べる」という発想ですね。だから私は、リーズナブルで、かつ「いつでも」食べられるように、マグロ資源の開拓に力を入れてきたわけです。
 いま、世間ではマグロの乱獲問題が騒がれていますが、私たちのやり方はちがう。世界各国の漁港を巡って、100kg、200kg超級の成魚を獲り、沖合に生け簀をつくって「備蓄」します。もちろん産卵も終わらせるので資源保護にもつながりますし、計画的に出荷することで、常に高品質のマグロを安価でお客さまに提供できるわけです。この「備蓄」のやり方は、マグロに限らずイワシやアジなどの大衆魚にも応用しています。国内・海外問わず、いろんな漁場に足を運び、現地の漁師さんや、組合、さらに政府ともタイアップしながら美味しいものを調達する――。このチャレンジは、今後もどんどん続けていきます。

世界中に、喜代“村”を。誰もに喜ばれる食材ネットワークをつくりたい。

 魚だけに限らず、野菜やお米にもこだわりを持っています。例えば『すしざんまい』で使うガリは、完全無農薬の有機栽培。肥料からすべて有機です。寿司米も、日本各地6カ所でつくってもらっていて、常に一番美味しいものを厳選しています。もっと言えば、鳥や牛も飼育しています。そうやって農家や産地の方々と一緒に育て、自分たちが納得する食材をお客さまに提供している。そんな自負があります。
 自然を保護しながら、より良い食材を調達するのが、私の使命。日本全国・世界各国に「喜代村」という“村”のネットワークをつくりたいんです。気候や風土に合わせて、例えばこの村ではショウガを植えてもらう、この村では山菜を採ってもらう、といった具合に。大規模じゃなくても、一人で畑仕事できる範囲でならば、お年寄りにもお願いできます。もし収穫が少ししかなくても、「買い取りますよ」とお約束することで、働く意欲も増してきますよね。それは、ちょっとした村おこしにもなるんじゃないかと。結果、より安全で美味しい食材をお客さまさまの元に届けることができると考えています。
 「人に喜んでいただけることをやる」。その一点が、今までやってきた事業も含めた、私、そして喜代村の目標です。お客さまにはもちろん、産地の方にも従業員にも、もっと言えば国や政府にも――。喜びをみんなで分かち合って、明るく・楽しく・元気よく過ごしていくために、これからもアイデアをどんどん出し続けていきます。

ページの先頭へ戻る