1. 我道 ~飲食の社長たち~
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食を伝える「拘り」がそこにある 我道 飲食の社長たち

日本の飲食業界をリードする社長たちの「拘り」はどこにあるのか。生い立ちや人生観などのパーソナリズム視点からひも解き、人気飲食店オーナーの素顔と内面にクローズアップしていきます。企業理念やビジョンはもちろん、お客様一人ひとりに対しての想いや取り組みも知ることができるシリーズ企画です。

記事

株式会社朱田商事 代表取締役社長 朱田珍安氏

2012/04/17

株式会社朱田商事

代表取締役社長

朱田珍安氏

大統領や国王をもてなした味と技術で、
「幸せになれて喜ばれる」良心的な店をつくる。

プロフィール
韓国出身。韓国の一流ホテルとして知られる『新羅ホテル』でシェフを務め、韓国大統領をはじめ、世界の政治家・VIPらに料理を提供。また、自身が開発した『サンチュしゃぶしゃぶ』が韓国で大ヒットメニューに。その後、日本全国で焼肉店の経営指導を行い、2000年に焼肉店を独立開業。現在、炭火焼肉・ジンギスカン食べ放題『炭の談笑屋』(新橋)、『とらじ館 日暮里店』、『とらじ館 上野店』、『まんぷくカルビ 新宿店』、そして韓国料理専門店『青鶴洞(チョンハクドン) 恵比寿店』と『青鶴洞(チョンハクドン) 銀座店』の6店舗を経営する。
主な業態
『炭の談笑屋』など、炭火焼肉店・韓国料理専門店6店舗の運営
企業HP
http://damsoya-shibashi.cheonghakdong.com/
株式会社朱田商事 代表取締役社長 朱田珍安氏の写真

韓国一流ホテルで培った調理技術と、大統領パーティーで磨いた"肉を見抜く眼"。

 私が飲食業に関わったのは、かなり遅くて、34歳の時です。韓国の一流ホテル『新羅ホテル』に、調理師として勤めました。ですが、2年間で正社員試験に3回落ちて、別のホテルへ調理責任者として転職。しかし、新羅ホテルの調理長から「お前の力が必要だ」と言われて、再び試験を受け、副調理長に選ばれました。
 そして、以前は自分の先輩だったスタッフたちに認めてもらうために、休みの日も一切遊ばずに勉強しました。街のレストランで新メニューを食べたり、他店の調理長から話を聞いたり。その甲斐があって、ミーティングで味の改善や新メニューを提案していくうちに、副調理長として認められるようになりました。
 新羅ホテルでは、韓国大統領のパーティーや、海外の国王や大統領を迎えるパーティーなどを数多く担当しました。そのような宴会は、調理中の姿勢にまでも非常に厳しくて、緊張感がすごくあるんですね。そんな厳しい環境を経験したことで、自分の調理人生が大きく変わったと思います。調理は精神面が大切ですから、その部分が成長できましたね。
 また、美味しい肉を見分ける眼も、ここで鍛えられました。一つの肉の塊の中でも、味に大きな差があるんです。VIPに出す肉の目利きをしていたので、肉の良し悪しは一目ですぐわかるようになりました。ですから今、自分のお店でも、それぞれ得意分野を持つ4店の肉屋さんに「こういう肉の、この部位を」と指定して、良いところだけを厳選して仕入れています。

「食」とは、「楽しくて、幸せになること」。

 ホテルを退職後、調理師兼ジェネラルマネージャーとして焼肉ロースターメーカーから誘われて、日本全国で指導を行いました。調理や接客の指導から、人の管理方法、会社経営まで、焼肉店を運営するノウハウを教える仕事でした。
 しかしある日、そのメーカーの社長が心筋梗塞で倒れて入院したんです。私は約12年間、社長と一緒に頑張ってきましたが、それを機会に将来のことを考えまして――。そこで、社長の慰留や取引先からの誘いもありましたが、皆さんへの義理を通して、自分自身で店を創業することにしました。2000年、私が47歳の時でした。
 「食」とは「楽しくて、幸せになること」だと、私は考えています。ですから、新大久保に開店した1号店に『談笑屋(だんしょうや)』という名前を付けました。「いろいろな話で盛り上がって、楽しい時間を過ごしてください」という意味があります。しかし、お客様から「何て読むの?」と聞かれることが多くて、2号店目からは少し名前を変えました(笑)。でも、「お客様に楽しんでいただきたい」という思いは、今も同じですね。
その後、飯田橋に引越して、2003年には新橋に現在の本店をオープン。26坪のお店ですが、おかげ様で、有名人気店として多くのお客様にご来店いただいています。さらにここ数年は、韓国料理専門店の「青鶴洞(チョンハクドン)」を恵比寿と銀座コリドー街に開店。当社が商標登録している人気料理『サンチュしゃぶしゃぶ』をはじめ、韓国の伝統料理やオーガニックのお料理などをご提供しています。

良心的なお店であり続けるために、徹底したスタッフ教育を。

 私の経営理念は、「良心的なお店をやりましょう」ということです。世の中の経済状況が厳しい今、誰かに認めてもらうためではなく、社会の一員として良心的なやり方で商売をしていきたいと考えています。
 ですからスタッフにはいつも、「きちんと量りで肉の重さを使いなさい。少ない量で利益を上げるようなことは絶対しないように」「食材がまだきれいだから使おう、などと考えてはいけない」と教えています。全員が、「いつも自分の良心を持つ」ようにしているのです。
 「お客様が、何故、うちに来てくれるのか」。常にそのことを考えて、一組一組のお客様に対して感謝の気持ちを持てないと、良い接客はできないと思います。そのためにも「お客様がどうやって店に入ってくるのかを見つめなさい」とも教育しています。そして、ご来店くださったお客様の元へ数歩前に歩み寄ってお迎えすること。席が空いてる時は、お客様にお好きな席を選んでいただくこと。そのように、「お客様がどういう気持ちで店に来てくださっているのか」をきちんと読むことが大切だと思います。
 また、厨房のスタッフには、自分がつくった料理を「お客様が本当に喜んで食べていらっしゃるのか」を見るように指導しています。そして、食後の支払い時に「本当に満足した顔をしていらっしゃるか」も。――お金を稼ぐための商売ではなく、常に良心的な企業、お店でありたい。それが、私の思いです。

2000円以下の食べ放題も、大ヒット料理も、全てお客様に喜んでいただくため。

 他にも、私たちのこだわりの一つとして、新宿歌舞伎町の『まんぷくカルビ』の焼肉食べ放題があります。この店では「財布がそれほど厚くない大学生さんたちにも喜んでいただこう」と、2000円を切った食べ放題コースを設定。非常にご好評いただいています。私が予想していなかった高校生のお客様も多くて、1日に50人ほどいらっしゃることもあります。
 今後も、自分の力がある限り、良いお店をオープンしていきたいと考えています。韓国料理専門店も経営していますが、やはり私は焼肉を指導しながら日本全国を回りましたし、良い焼肉店を増やして皆さんに喜んでいただきたいですね。
 さらに、私が開発して、韓国で大ヒットした『サンチュしゃぶしゃぶ』のような人気メニューも考えていきたいと思っています。当時、新羅ホテルのレストランに1日約1200人が来店する中で、『サンチュしゃぶしゃぶ』だけを食べるお客様が800人ほどいました。それに続くヒット料理を生み出したいと思います。また個人的には、ホームレスの方たちが一食でも多く食事を食べられるような奉仕や寄付を続けることも目標の一つです。現在も、足立区や台東区で活動を行っています。
 焼肉業界は、これまで、狂牛病をはじめとする様々なニュースの影響を受けてきました。そのような状況になっても、安全な肉だけを取り扱って、お客様に「食」を安定的にご提供していく。それが、今の私の大きな目標です。

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