1. 我道 ~飲食の社長たち~
  2. 株式会社ケーズカラナリープランニング 代表取締役 越野健太郎氏
食を伝える「拘り」がそこにある 我道 飲食の社長たち

日本の飲食業界をリードする社長たちの「拘り」はどこにあるのか。生い立ちや人生観などのパーソナリズム視点からひも解き、人気飲食店オーナーの素顔と内面にクローズアップしていきます。企業理念やビジョンはもちろん、お客様一人ひとりに対しての想いや取り組みも知ることができるシリーズ企画です。

記事

株式会社ケーズカラナリープランニング 代表取締役 越野健太郎氏

2012/05/24

株式会社ケーズカラナリープランニング

代表取締役

越野健太郎氏

1969年11月生

本物の素材を、リーズナブルに。異色の経歴で鍛えられた「お客様の視点」で勝負。

プロフィール
横浜市出身。早稲田大学卒業後、清水建設(株)、インターネットイニシアティブ(株)、マネックス証券(株)を経て、独立。飲食未経験ながらも、「こんな店があればいいのに」と感じた体験を元に、徹底したオフィスワーカー目線の分析力を発揮し、32歳で神楽坂に第1号店をオープンさせる。35歳からの2年間は東証2部(株)江戸沢の代表取締役を兼務。2006年にはシンガーポール高級和食『Takumi Tokyo』をプロデュース。現在では、地鶏料理『軍鶏郭』、鉄板焼『MADOy』、野菜料理『Marche de VinShu』など、厳選素材をリーズナブルに提供する直営店7店舗を展開。
主な業態
地鶏料理『軍鶏郭』、鉄板焼『MADOy』、野菜料理『Marche de VinShu』等
企業HP
http://www.kcplanning.co.jp/

株式会社ケーズカラナリープランニング 代表取締役 越野健太郎氏の写真


大企業からベンチャー企業へ転職。がむしゃらに働いた会社員時代。

  私の場合、初めから飲食業界を目指していたわけではなく、大学卒業後に入社したのはゼネコン大手の清水建設でした。当時は「不動産開発」と言えば花形の仕事。自分もそこで勝負してみたいと思っていました。管理や営業を含め事務系の仕事を一通り経験させてもらった頃、折しも時代は建設不況の流れに…。思い切って退職を決意し、以前から興味のあったIT関連の仕事に就き、当時まだベンチャー企業だったIIJに転職しました。営業からスタートし、徐々に大きなプロジェクトを任されるようになったのですが、そこでマネックス証券のシステム開発を担当したことが縁で、そのままマネックス証券に転籍。IIJもそうでしたが、マネックス証券も初めは小さな会社が急速に成長し、上場を果たすまでになる…。猛烈に忙しかったけれど、その分面白い時期を過ごさせてもらいましたね。結果、大企業の安定ではなく自分で会社を動かすダイナミズムを求めるようになり、独立への思いが強くなっていくわけです。

通い詰めたBarが、独立のヒント。「仕事終わりに行ける美味い店」を作りたい。

 初めはIT関連の会社を興そうと考えていたのですが、初期投資に費用がかかり過ぎたため断念。そんな時、よく通っていたBarのことを思い出したんです。当時、遅くまで働いて何か美味いものが食べたいと思っても開いている店がなかった。常連になったBarのマスターに頼んで時々料理を出してもらっていたんですが、それが結構美味しくて…。「あんな店があれば」がヒントになって、飲食店での独立を思いついたというわけです。
 独立は決意したものの、具体的なイメージは固まっていませんでした。なのに物件だけ先に決め、3ヶ月間は空家賃を払いました(笑)。今思えば、この3ヶ月のおかげでじっくりと構想を練り、リサーチすることができたわけですが。
 「遅くまで落ち着いて飲めるBar的な要素がありつつも、美味しいものが食べられるお店」というコンセプトを軸に、ビジョンを構築。2003年、神楽坂に地鶏料理の第1号店をオープンさせました。調理や接客の経験はなくとも、「お客様の目線」には自信があり、おかげさまで開店月から黒字化に成功。現在では地鶏料理『軍鶏郭』『馳走小路』のほか、鉄板焼『MADOy』、野菜料理『Marche de VinShu』など7店舗を展開しています。

地鶏、鉄板焼、野菜…。ごまかしのきかない「素材」を、リーズナブルに提供。

 いずれのお店も、素材にはこだわっています。『軍鶏郭』では東京しゃもを、『馳走小路』では名古屋コーチンを、『MADOy』ではA5ランクの黒毛和牛を、『Marche de VinShu』では契約農家から直接仕入れる厳選した野菜を使用。高級レストランに引けを取らない食材を、カジュアルに楽しんで頂ける価格で提供することで、日常使いできるお店作りを心掛けています。
 もちろん、素材の良さにあぐらをかくのではなく、決して家庭では再現できない調理法や味付けのサプライズも重要だと考えています。それには、生産者の思いが込められた食材を、絶妙に操るシェフの力が欠かせません。やみくもな出店はせず、自分の目が届く範囲でお店をプロデュースしているのもそのためです。

作り手の努力と心意気をお客様に届けたい。

 例えば私が若い頃、せっかく美味しい料理があってもドリンクのメニューが少ないと感じるお店もありました。自分の店では、ちゃんと料理に合うお酒を提供したいと。いろいろ勉強していくと、日本酒にしても国産ワインにしても、農家や蔵元の方々が丹念に手間暇をかけて作っておられる素晴らしいお酒がたくさんある。そして、その方々はたいてい和食を中心とした料理を食べ、その舌が美味しいと思うものに合うようなお酒が自然と生まれている…。ある意味、必然なのです。ですから私のお店では、時には収穫をお手伝いするなど生産者の方々と密接に関わりながら、料理に合うお酒を厳選し、お客様に提供しています。
 お肉や野菜も同じです。例えば名古屋コーチンは、抗生物質を使わず病気から守りつつ、ブロイラーの何倍も長い飼育期間を、手をかけて育てておられる。そんな作り手の努力は、炭火で焼いた瞬間の香りや脂の輝きから、思いを馳せることができるわけです。
 食にまつわる背景や文化までもお客様に楽しんで頂きたい…。その思いを胸に、適正な価格で最高の味と豊かな時間を創造し、生産者とお客様とをつなぐ架け橋となることこそ、私の使命なのかもしれません。

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